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年齢差別と世代間交流のはなし

  • 執筆者の写真: 【NPO法人CORUNUM】 HP事業担当者
    【NPO法人CORUNUM】 HP事業担当者
  • 3 日前
  • 読了時間: 7分

更新日:9 分前


「もう歳だからやめておこう」「高齢者は頑固だ」といった考えや評価を持ったり、耳にしたりしたことはありませんか?


〇歳=◎△$×●&%#?!


本記事では、エイジズムをテーマに取り上げます。


本記事のまとめ



超高齢社会と年齢による偏見と差別


ところで、日本は「超高齢社会」にあるといえます。


2024年時点で、65歳以上の高齢者が総人口に占める割合は29.3%に達しており(総務省,2024)、厚生労働省の令和6年簡易生命表によると、平均寿命は男性81.09歳、女性87.13歳と報告されています。


一般的に高齢者は65歳以上とされるため、私たちは15年から20年、あるいはそれ以上の期間を「高齢者」として生きる可能性があります。


このような人口構造の中で、近年注目されているのが「エイジズム」という概念です。


エイジズムとは、社会老年学者のロバート・バトラー(Butler)によって提唱された、年齢を理由とした偏見や差別を指します。


配慮とエイジズムの違い


もっとも、年齢を重ねることで身体的な変化が生じるのも事実です。関節の可動域が狭くなったり、筋肉量が低下したりするため、夏の農作業ではこまめな休憩を取ってもらう、冬の雪下ろしは一緒に作業する等の配慮が必要な場合もあります。


重要なのは、年齢そのものではなく、その人の身体的特徴や状況に基づいているかどうかという点です。一方、一律に「高齢だから危ない」と判断することは,エイジズムにあたるでしょう。


高齢者ドライバーをめぐるイメージ


例えば、高齢者ドライバーを取り上げたニュースを度々耳にしますMS&AC(2024)の調査では、75歳以上のドライバーについて「危険だと思う」と回答した人が8割以上を占めています。


一方で、警察庁交通局(2024)のデータによると、免許保有者10万人あたりの交通事故件数は、16~24歳が612.8件であるのに対し、75歳以上は390.9件となっており、若年層が上回ることが示されています。


特定の年齢層とネガティブなイメージがつながってしまっている実態と、印象と実際には乖離があることがうかがわれます。


エイジズムはステレオタイプの一種


エイジズムは、人種差別や性差別と並び、代表的な差別概念の一つとして扱われています。その特徴は、誰もが年を重ねる存在であり加齢に対し、他者として関わる状態から、自身のこととして関わるというように立場が変わる点にあります。


若年層に対する偏見や、高齢者に対するポジティブな偏見も広い意味ではエイジズムに含まれますが、本記事では主に高齢者に対するネガティブな態度に焦点を当てます。


エイジズムは以下の三つの要素から成り立っています(Alport,1968)。

ステレオタイプ

 特定の集団に対して定着したイメージ

 (例)「高齢者は記憶力が悪い」「頑固だ」

偏見

 特定の集団に対する感情や評価例

 (例)「高齢者は苦手だ」「雇いたくない」

差別

 偏見的な認知や感情が行動として表れたもの例

 (例)「雇用における年齢制限」「不当な扱い」



エイジズムがもたらす影響と具体例


WHOの報告書(2021)によると、エイジズムは身体的・精神的健康の低下、幸福感の低下、社会的孤立や孤独感の増加、生涯を通じた機会の制限、さらには経済的損失にもつながるとされています。


そして、エイジズムの影響を、他者から向けられるものと、自分自身に向けられるものに分けて考えていくと、


周囲の人が持つエイジズムには、高齢であることを理由に差別された経験や自分がステレオタイプ的に評価されてしまう恐れがあります。これらは、能力の発揮や主観的幸福感を低下させることが指摘されています。また、年齢差別を受けた経験は、病気や障害のリスクを高めることも報告されています。


そして、自分自身の「年を取ったら何もできなくなる」といった否定的な考えが内面化すると、健康行動や記憶能力、身体活動、人生への積極的な関与が低下することが示されています。周囲や自分の高齢に対するネガティブな態度は、感情や行動、能力にまで影響を及ぼすのですね。社会参加には環境や関わり方が影響するという国際生活機能分類(ICF)の考え方とも通じるものがあると思います(厚生労働省の資料を参照)。


周囲からのエイジズムが、本人の感情に影響を及ぼす例として、「ベイビー・トーク」が挙げられます。


これは、高齢者に対して赤ちゃんに話しかけるような言葉遣いをすることです。本人の自尊心を損なう可能性があるとされています(Caporael,1981)。



ところで,より良い老後とは?

こうしたネガティブなエイジズムを乗り越える概念として、「サクセスフル・エイジング」が提唱されています。


Rowe & Kahn(1987)が提唱したこの概念は、主観的な満足感ではなく、客観的な状態に注目した点で画期的でした。


構成要素は、

①病気や障害のリスクが低いこと、

②高い認知・身体機能を維持すること、

③人生への積極的関与

の三つです。


エイジズムはこれらを妨げるため、その解消は高齢期の適応に大きく寄与すると考えられます。


年齢差別を超えた世代間交流の可能性


WHO(2021)は、エイジズムの解消に向けた解決策として、法政策、教育・啓発の取り組み等も挙げていますが、本記事では世代間交流に焦点を当てたいと思います。


関わりが重視されるのは、異なる集団のメンバーが、特定の条件下で関わることで偏見やステレオタイプが解消されるという接触仮説(Allport,1954)があるからです。


しかし、単に関わる機会があれば良いというわけではなく、質を意識した世代間交流が大切であるという指摘もあります。労働場面では、肯定的、自発的、自然、協力的、快適な多世代間の接触がある人ほどエイジズムの傾向が低いことが示されています(Iweins.et al,2013)。また、知識も大切であるとされています(Allan & Johnson,2008)


私自身、弊団体の高齢者施設でのイベントに参加する中で、計画通りに進まない場面も、ご入居者の方と一緒に試行錯誤したり、作成したりすることで、新たな見方や関係性を見つける瞬間があります。また、ご入居者様とやり取りをする中で、戸惑いも多いですが、認知症について知ることで、状況がわからず混乱されていることが理解できたり、何度も同じことを確認されることも合点がいったりします。



まとめ


エイジズムが生じる背景には、死への恐れを回避しようとする心理(存在脅威管理理論)など、さまざまな説明がなされており、生き物である以上根本的にエイジズム傾向になりやすい側面もあると思います。しかし、長寿が平均的になった今では、家族、職場、地域、そして自分自身との関わりの中で、「老い」をどう捉えるかがますます重要になると思われます。


高齢者に対するネガティブなエイジズムは、自分にも他者にも悪影響を及ぼしますが,一方で,ユング心理学では,人類は共通の深層心理があると仮定されて,それは夢や神話,物語に現れるとしています(元型)。


メジャーなお話で思い当たるのは,ハリー・ポッターシリーズの「アルバス・ダンブルドア」などですかね。彼は、大抵全てお見通し状態であり、若者にヒントを与える姿が印象的です。知恵と経験と洞察力、未熟な者の味方といった無意識も存在していると思います。また,ワインや陶磁器などについては、その歴史的背景や物語に価値を見出す「ヴィンテージ」や「アンティーク」のイメージも存在します。


発達的変化としてニュートラルに受け入れる,さらには,豊富な経験や知識で若者を導く,深みが出てくるといったポジティブな捉え方ができるポテンシャルが私たちにはあると思います。そして、実際に関わってみる、高齢期の発達についてもっと調べてみるということも大切だと思います。



参考:

竹内 真純・片桐 恵子(2020). エイジズム研究の動向とエイジング研究との関連:エイジズムからサクセスフルエイジングへ 心理学評論,63,4,355-374 https://www.jstage.jst.go.jp/article/sjpr/63/4/63_355/_pdf/-char/ja

(厚生労働省,令和6年簡易生命表の概要より)https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life24/index.html

厚生労働省 国際機能分類:

WHO(2021)年齢差別に関するグローバルレポート:

Allan, L.J., & Johnson, J. A. (2008). Undergraduate attitudes toward the elderly: The role of knowledge, contact and aging anxiety. Educational Gerontology, 35, 1-14.

Allport, G. W. (1954). The nature of prejudice. Cambridge,

MA: Addison-Wesley.

Allport, G. W. (1968). The person in psychology. Boston, MA:

Beacon Press.

Caporael, L. (1981). The paralanguage of caregiving: Baby talk to the institutionalized aged. Journal of Personality and Social Psychology, 40, 876-884.

Iversen, I. N., Larsen, L., & Solem, P. E. (2009). A conceptual analysis of Ageism. Nordic Psychology, 61, 4-22.

Rowe, J.W., & Kahn, R. L. (1987). Human aging: Usual and

successful. Science, 237, 143-149.

総務省(2024)報道資料:

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