地方創生イベントを持続可能な地域活性化に繋げるには?4つの事例をピックアップ

地方創生は近年注目される分野で、その取り組みとして自治体などが主催となってイベントが開催される事例も少なくありません。
イベントは多くの人が集まり、地域の盛り上がりを感じさせる良い機会です。そのイベントによる経済波及効果などが計算され、行政の資料などで大々的に成功事例として紹介されていることもよくあります。
しかし、イベントは「一回限りで終わってしまう」という特徴があります。イベントの日だけ盛り上がっても、それが継続的な地域活性化・地方創生に本当に繋がっているのか、疑わしいものが非常に多いとされています。
税金を財源とする補助金等を多く投入した挙句、都市部の地域活性化関連の業者や行政等の実績を演出するのみで、地域の持続的成長に繋がる投資になっていないのであれば、適切ではないでしょう。
この記事では、日本を3周し日本各地のイベントを訪れ、地域活性化PJ等にも参画する筆者が、持続的な地方創生・地域活性化という文脈における先進事例と考えうるイベントをいくつかピックアップし、最適なイベントのあり方を検討します。
1, イベントをきっかけとして地方創生に繋げる例
まず紹介するのは、福井県の越前鯖江エリアで開催される「RENEW」というイベントです。
このイベントは、伝統産業を担う工房等がイベント期間中に対外向けに工場を解放する、オープンファクトリーと呼ばれるイベントです。
このイベントの特徴は、イベント自体を目的ではなく手段として捉えていることであると言えます。対外的に魅力発信をすることで関係人口や移住者の増加に繋がる取り組みであると同時に、自分たちの仕事に関心を持って見てくれる人たちと直接接することで職人たちの自信に繋げる取り組みでもあります。
2026年が12回目の開催とのことですが、すでに新商品開発の機運や工房併設の直販店の増加などの効果が生まれているようです。
職人の世界はB2Bの取引になりがちですが、それを一部B2C化することに成功した事例であり、これまで閉鎖的で得られる情報が少なかったものをオープンにするということに価値があると言えるでしょう。
また、このイベントは現在は補助金や助成金に頼ることなく、協賛や参加費等により運営されているとのことで、持続可能性の点でも注目できる事例です。
2, 一過性のイベントから地域産業化と域内循環で地方創生を実現する例
次に、秋田県大仙市大曲地区を拠点とする「大曲の花火」を紹介します。春、夏、秋に大規模な花火大会が実施され、大曲の花火という名称はその総称として使用されているようです。
大曲の花火は日本でもいち早く花火大会本体の収益化が行われ、夏に行われる全国花火競技大会では全国から有料観覧席だけで10万人の観客が訪れ、その収益は8億円以上と計算されます。
大仙市には歴史的な花火業者が4社あり、大規模なプログラムの多くはそれらの地元業者が打ち上げるため、協賛金も含めた収益が地元業者に還元される仕組みが構築されています。
また近年、地元企業の協働で(株)花火創造企業が設立され、観覧会場設営の一部がこの企業に委託されることにより地域からの所得流出を防止している側面が見られます。
しかし、花火大会単体を収益化するだけでは継続的な地域活性化には十分ではありません。
イベントとしては、かつては大規模な花火大会は夏だけでしたが、春の章と秋の章を新たに開催することで、地域への経済波及効果の時期的な広がりを実現しています。
多くの地域の花火大会はやればやるほど赤字になりがちですが、大曲の花火は少なくとも赤字にはなっていないことが示唆されています。かつその費用の多くが、花火を製造する地元業者に流れる仕組みになっているのは注目すべき点です。
また、関東圏からの多くの客は新幹線を利用することになりますが、JR東日本がスポンサーに入っており、間接的に移動に伴う経済効果の一部が大会に還元される構造にもなっています。
さらに近年は、花火をイベントではなく産業として捉えた動きが見て取れます。
先ほど紹介した花火創造企業はイベント設営のみならず、安価な量産型花火を製造し、地元の伝統ある4社が高付加価値の花火玉の製造に集中できる体制を整えています。
加えて、「大曲の花火」をブランド化し、他の地域や他国において「大曲の花火」としてプログラム単位で出品している事例もあります。
外貨獲得手段として、またその獲得した外貨を域内で循環させる仕組みとして確立されていると見ることができます。
3, イベントをきっかけに常設化し地域活性化に貢献する事例
次に紹介するのは、岐阜県各務原(かかみがはら)市において実施されてきた「マーケット日和」です。
各務原市の公共空間を活用し、毎年11月3日の文化の日に開催されてきました。
個性的な店舗の出店やイベントなどが注目を集め、約2万人が訪れるビッグイベントです。
各務原市はこのイベントの盛り上がりを単発ではなく常設のものにしようと、公園の整備を行いました。
これにおいてはパークPFIという制度が活用されました。これは民間事業者が商業施設の開発とその収益を活用した公共設備の整備を行うものです。
一回限りだったイベントが常設に拡大され、かつ自治体側は公共設備の費用負担を減らしながら、年230万円の使用料を収入として得ることにもなっています。
この事業の結果、来園者数の増加やイベント開催の増加などにも繋がっているようです。
4, 地域の人材育成やシビックプライド醸成の観点で地域活性化に繋げるイベント
最後に紹介するのは、「こうのす花火大会」です。また花火大会ですが、「大曲の花火」とはかなり形が異なっています。
こうのす花火大会は日本で一番重い花火である四尺玉が打ち上げられることで知られており、都心からも近いことから知名度が高い花火です。
しかし、先ほどの大曲の花火では多くが地元業者に委託されていたのに対して鴻巣市内には花火業者がないため、他の地域の花火業者に委託されます。
また、収益についても多くが地元の業者の協賛金により運営されており、構造としては所得を地域外へ流出させている形と言えそうです。
しかし、こうのす花火大会は花火そのものというよりも、副次的効果としての産業活性化や次世代に向けたシビックプライド育成等を目的にしていると考えられます。
この花火大会は地元商工会の青年部により実施されており、協賛金を集めるところから片付けまで、次世代の経営者や若手の経営者が実施していることから、将来のビジネス上の繋がり作りなどにも貢献しているでしょう。
また「うちの街ではギネス世界記録の花火が上がるのだ」という地元のプライド育成にも繋がる内容であると言えます。
鴻巣市は東京都市圏のベッドタウン的立ち位置であることから、人口減少はそこまで極端ではありません。
また事業者が多いからこそ地元企業による協賛金で運営できるという側面もあります。
地域が抱える課題の背景によってもイベントの実施目的は変化してくることが伺えます。
5,まとめ
日本各地でさまざまなイベントが実施されますが、それ自体では収益性に乏しく、自治体からの補助金や助成金等に頼るイベントや、外部からのスポンサー費用の割合が著しく高いイベントは、持続可能性について疑念が残ります。
また「賑わっている雰囲気」を演出するだけでは、継続的な地域活性化には繋がりません。
ただただ「〇〇マルシェ」を開催して、どこでも食べられるような食べ物を販売し、有名人を呼んで盛り上がった雰囲気を作り出すだけでは、本質的な地域活性化にはなかなかならないのです。
大切なのは、イベントをいかに金銭的に事業可能な状態にするか検討すること、また、いかに費用対効果の高いものにしていくのか、出口戦略や開催意義を設定すること、そして域内循環を構築可能な仕組みにすることなどではないでしょうか。



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