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世代を超えた交流の場:幼老複合施設の魅力とは?

  • 執筆者の写真: 【NPO法人CORUNUM】 HP事業担当者
    【NPO法人CORUNUM】 HP事業担当者
  • 8月8日
  • 読了時間: 7分

こんにちは! NPO法人CORUNUMの水澤です!


今回は今後の共生社会の姿を体現しているといえる、幼老複合施設の魅力についてお話したいと思います!


近年、少子高齢化や核家族化が進む中で、異なる世代が日常的に交流する機会は減少しています。


そんな中、注目を集めているのが幼老複合施設です!


幼老複合施設

これは「宅幼老所」とも呼ばれており、高齢者介護施設と保育所や学童保育などの児童福祉施設が一体となった施設を指します。


幼老複合施設の目的は子どもと高齢者が同じ場所で過ごすことを通して共生社会をつくることにあります。


このブログでは、幼老複合施設概要から、その魅力課題、そして未来について詳しく解説します!


ぜひ最後までお読みください!





1. 幼老複合施設とは?



幼老複合施設での世代間交流


厚生労働省の記事によると、幼老複合施設(宅幼老所)とは、


小規模で家庭的な雰囲気の中、高齢者、障害者や子どもなどに対して、1人ひとりの生活リズムに合わせて柔軟なサービスを行う取り組み


と定義されています。


具体的には、高齢者向けの介護サービスと子ども向けの保育サービスを、同じ建物内隣接した敷地内で提供する福祉施設の形態です。


単に施設が併設されているだけでなく、世代間交流を前提とした運営が大きな特徴です!


現状、幼老複合施設として個別に集計されたデータは存在しないため、正確な施設数を把握することは困難です。



しかし内閣府の統計では、「老人福祉施設に併設している全国の保育所は平成12年は564ヶ所、平成18年は577ヶ所である」とされています。



また、施設の形態は主に以下の2つに分けられます。


同一建物型

高齢者施設と児童施設が、同じ建物内に配置されているタイプです。


同じフロア内で区切る構造や、フロアごとに分ける構造が見られ、日常的な交流が生まれやすい特徴があります 。



【隣接建物型】

異なる建物が、渡り廊下などで繋がっているタイプです。


子どもが苦手な高齢者や静かに過ごしたい高齢者への配慮として、介護施設と保育園の建物を別々にする一方、交流の場はオープンな構造にし、子どもたちが勝手に行き来できないよう通路に扉を設けるなどの工夫が見られます。




2. 施設の例


幼老複合施設は、それぞれの地域や運営方針によって、様々な特色を持っています。ここでは、いくつかの代表的な例をご紹介します。



  • たけのうち保育園・東淵野辺デイサービスセンター(神奈川県相模原市)

    • 2000年に開設された施設のパイオニアの一つ。

      保育園とデイサービスセンターは1階でつながっており、両施設の職員や利用者が互いの様子を感じられるようフェンス状になってい る。


    • 子どもたち1人あたり、週1回のペースでデイサービスを訪問する「計画交流」と、共有スペースでの自然な「非計画交流」両立しています。



  • 行徳ケアハウス翔裕園・行徳デイサービス翔裕園・すえひろ保育園(千葉県市川市)


    • 地域の多世代に渡るふれあい・交流事業の推進のために設立。


    • 週に1回、保育園児と高齢者合同で朝の体操を行っています。

      また、屋上農園の合同作業、保育園児のお遊戯の披露やランチを一緒に食べる事もあります。



  • デイケアハウスにぎやか(富山県富山市)


    • NPO法人にぎやかが運営する在宅福祉サービス。


    • 多世代交流だけでなく、様々な個性、障害のある大人・子どもたちとの相互理解、交流が育まれる場です。




3. 幼老複合施設の魅力について



幼老複合施設での世代間交流

幼老複合施設の魅力は、子ども、高齢者、そして地域社会のそれぞれに大きなメリットをもたらすことです。それぞれの視点からの魅力を以下に書いていきます!



【高齢者にとって】


  • 生きがいと活力の創出: 

     子どもたちの元気な声や笑顔に触れることで、高齢者の心身が活性化され、日々の生活にハリが生まれます。


    とある施設では、「無口で一人寂しく日常を過ごしている高齢者の方も、子ども達が来ると生き生きとする姿がみられる」との声がありました。


  • 認知機能の維持: 

     子どもとの会話や遊びは、脳に良い刺激を与えます。


    読み聞かせや歌などの交流プログラムに参加することで、認知機能の維持や向上に効果があると期待されています。




【子どもにとって】


  • 思いやりと社会性の育成: 

     高齢者と接することで、子どもたちは立場の違う相手を気遣う心思いやりを育みます。



    また、自分の祖父母以外の大人と交流することで、多様な価値観に触れ、社会性を身につける貴重な機会となります。


  • 多様な学びの機会: 

     昔の遊びや文化を高齢者から教わることで、学校では学べない生きた知識や経験を得られます。



【地域社会にとって】


  • 地域共生社会の実現: 

     施設が地域の福祉拠点となり、世代を超えた住民交流の場を提供します。これにより、地域コミュニティが活性化し、互いに支え合う「地域共生社会」の実現に貢献します。


  • サービスの効率化: 

     同じ敷地内で複数のサービスを提供することで、土地や建物の有効活用運営コストの削減に繋がります。これは、公的な福祉サービスの持続可能性を高める上でも重要です。




4. 懸念点


多くの魅力を持つ一方で、幼老複合施設の運営にはいくつかの課題も存在します。


  • 感染症のリスク: 

     高齢者も子どもも免疫力が低いことが多いため、インフルエンザや新型コロナウイルスなどの感染症が流行した場合、双方の施設に大きな影響を与える可能性があります。


    厳格な衛生管理体制の構築が不可欠です。



  • 事故やトラブルの危険性: 

     認知症のある高齢者が子どもに予期せぬ行動をとってしまったり、逆に子どもが走り回って高齢者の転倒事故を招いたりするリスクもゼロではありません。


    安全確保のための人員配置や設備、スタッフ間の連携が重要となります。



  • 人材確保と育成: 

     介護と保育、異なる分野の専門知識が求められるため、両方の分野を理解したスタッフの確保や育成が難しいという課題があります。



  • 運営コスト: 

     交流プログラムの実施や感染症対策、安全設備など、通常の単独施設よりも高い水準の運営コストがかかる場合があります。



このように、現状は運営の難しさから1970年代に広がり始めた一体運営施設は、2000年以降足踏み状態になっています。




5. 幼老複合施設の今後


今回は幼老複合施設の魅力についてお話ししました。


このように、今後の日本社会において、幼老複合施設の役割はますます重要になると考えられます。


国は、「地域包括ケアシステム」の推進や「我が事・丸ごと」地域共生社会の実現に向けた取り組みを進めており、その中で幼老複合施設は中心的な存在として期待されています。


例えば、厚生労働省は「宅幼老所」の設置を推進しており、介護保険法や児童福祉法に基づく様々な補助金制度が活用できます。


今後は、単に交流を行うだけでなく、地域住民がボランティアとして運営に参加したり、災害時の避難所としての機能を持たせるなど、地域コミュニティのハブとしての役割をさらに強化していくことが求められるでしょう。


幼老複合施設は、少子高齢化という課題を乗り越え、多世代が豊かに暮らせる社会を築くための、重要な鍵を握っていると言えます。



しかし、現在は人材確保や運営の観点から広がりが弱まっているという現状です。


そんな中、私たちCORUNUMは高齢者福祉施設に赴き、アートやゲームを用いたレクリエーションを行っています!





私たちの活動は、幼老複合施設の目的である世代間交流とも共通しており、アートを通じた共生社会の創造を目標としています。


今回の記事を読んで、私たちの団体や活動に興味を持っていただけた方は以下も併せてご確認ください!





参考資料


厚生労働省「宅幼老所の取組について」:


内閣府ホームページ「過疎の進む地域における福祉・介護について」:


北村 安樹子・第一生命経済研究所「幼老複合施設における異世代交流の取り組み(2)」:


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